バッチ管理は、同じ品目でも製造ロットごとに区別して管理する仕組みです。食品、医薬品、化学品など、ロット間で品質が異なりうる製品では必須の機能になります。
なぜバッチ管理が必要か
同じ品番の製品でも、製造ロットが違えば実質的に別のものとして扱わなければならない場面があります。
- トレーサビリティ:不具合が発生したとき、どの原材料ロットから作られ、どの顧客に出荷されたかを追跡する
- 有効期限管理:ロットごとに使用期限が異なるため、期限の近いものから使う
- 品質特性の差:同じ規格内でも、濃度や純度がロットごとに違う
- 法規制対応:医薬品や食品では、ロット単位の記録保持が法的に求められる
バッチの有効レベル
バッチ番号をどの範囲で一意にするかを、有効レベルとして設定します。この設定はシステム全体に関わるため、導入時に慎重に決める必要があります。
| レベル | 意味 | 特徴 |
|---|---|---|
| プラントレベル | プラント内で一意 | 同じバッチ番号が他プラントでは別物 |
| 品目レベル | 品目内で一意 | プラント間でバッチを移動しても同一性が保たれる |
| クライアントレベル | システム全体で一意 | バッチ番号が全社で唯一。管理は厳格だが運用は重い |
バッチの特性
バッチには、SAPの分類機能(Classification)を使って任意の属性を持たせられます。これが特性(Characteristic)です。
| 特性 | 用途 |
|---|---|
| 製造日 | いつ作られたか |
| 有効期限 | いつまで使えるか |
| 純度・濃度 | 化学品の品質値 |
| 産地 | 原材料の出所 |
| 品質等級 | A級品、B級品といった格付け |
特性を定義するには、まず特性(CT04)を作り、それをクラス(CL02、クラスタイプ023)にまとめ、品目マスタに割り当てます。QMの検査結果を自動的にバッチ特性へ書き込む設定も可能です。
バッチ決定
複数のバッチが在庫にあるとき、どれを引き当てるかを決めるのがバッチ決定(Batch Determination)です。
| 戦略 | 内容 |
|---|---|
| 先入先出(FIFO) | 古いバッチから使う。有効期限管理と相性がよい |
| 有効期限順(SLED) | 期限の近いものから使う |
| 特性による選択 | 純度が一定以上のバッチだけを引き当てるなど |
| 手動選択 | 担当者が個別に選ぶ |
バッチ決定も条件テクニックにもとづいています。検索戦略、選択クラス、ソート順序といった要素を組み合わせて設定します。SDの出荷時、PPの部品出庫時、それぞれに設定できます。
トレーサビリティ
バッチ管理の最大の価値は、追跡可能性にあります。製造指図には、投入した部品のバッチ番号と、産出した製品のバッチ番号が記録されます。
| 方向 | 問い | 用途 |
|---|---|---|
| トップダウン(前方追跡) | この原材料ロットは、どの製品になり、どこへ出荷されたか | 原材料に問題が判明したときの回収範囲の特定 |
| ボトムアップ(後方追跡) | この製品は、どの原材料ロットから作られたか | 製品クレームの原因究明 |
バッチ情報のレポート(BMBC=バッチインフォメーションクックピット)を使うと、これらの追跡を画面上で行えます。回収が必要になった際、影響範囲を短時間で特定できるかどうかは、企業のリスク管理能力に直結します。
ただし、追跡が機能するのは、投入時に正しくバッチが記録されている場合に限られます。バックフラッシュでバッチを自動決定させる場合、実際に使われたバッチと記録が一致しているかは、運用上の重要な確認事項です。