PPの期末処理は、製造指図に集まった原価を会計上あるべき場所へ振り分ける作業です。実質的にはCOの処理ですが、PP側のデータ整備が前提になるため、両者を合わせて理解する必要があります。
期末処理の流れ
| 順序 | 処理 | Tコード | 内容 |
|---|---|---|---|
| 1 | 未確認の指図の洗い出し | COOIS | 実績入力漏れがないか確認 |
| 2 | 完了した指図のTECO | CO02 / COHV | 製造終了分を技術的完了にする |
| 3 | 間接費の配賦 | CO43 | 直接費に間接費を上乗せ |
| 4 | 仕掛品の算定 | KKAO | 未完成分を仕掛品として認識 |
| 5 | 差異の計算 | KKS1 | 完成分の標準との差を分解 |
| 6 | 決済 | CO88 | 仕掛品と差異を会計へ転記 |
4と5は排他的です。同じ指図について、未完成の期は仕掛品、完成した期は差異として処理されます。SAPが指図のステータスにもとづいて自動的に振り分けます。
仕掛品(WIP)の算定
期末時点で製造途中の指図には、既に材料費や加工費が投入されています。この金額を仕掛品として貸借対照表に計上する必要があります。
仕掛品の計算方法には2つの考え方があります。
| 方式 | 計算 | 向いている生産 |
|---|---|---|
| 実際原価による仕掛品 | 指図の借方合計 − 貸方合計 | 受注生産、個別原価計算 |
| 目標原価による仕掛品 | 確認済み工程の標準原価を積み上げる | 大量生産、標準原価計算 |
実際原価方式は、指図に実際にかかった金額をそのまま仕掛品とします。目標原価方式は、「工程3まで終わっているから、標準原価のうち工程3までの分」という計算をします。後者は確認入力の精度に依存します。
差異計算
完成した指図については、実際原価と標準原価の差を差異として計算します。詳細はCOの差異分析で扱いますが、PP側では次の点が重要です。
- 差異計算はTECOまたはDLVのステータスが前提
- 確認入力の精度が差異の意味を左右する。時間を適当に入力していれば差異も無意味になる
- 不良数量の記録が正しくなければ、歩留まり差異が正しく計算されない
滞留データの確認
PPでは、処理されずに残るデータが業務を歪める原因になります。月次で以下を確認する運用が必要です。
| 確認項目 | Tコード | 放置した場合の影響 |
|---|---|---|
| 古い未確認指図 | COOIS | 仕掛品が過大に。MRPが余分な手配をする |
| 未TECOの完了済指図 | COOIS | 部品予約が残り、不要な発注が発生 |
| 未消費の計画独立所要量 | MD04 / MD62 | 過剰な生産計画が残り続ける |
| 期限切れの計画手配 | MD04 | 実行されない手配が所要量を歪める |
| 未決済の指図 | KOB1 | 原価が指図に滞留し、製品原価に反映されない |
在庫評価との関係
完成品を入庫すると、標準原価で在庫が計上されます。実際原価との差は差異として処理されるため、在庫評価額は標準原価のままです。
品目元帳(Material Ledger)で実際原価計算を行っている場合は、期末に差異が在庫と売上原価に按分され、在庫評価額が実際原価に近づきます。S/4HANAでは品目元帳が標準で有効なため、この処理が前提となる構成が増えています。
この場合、PP・CO・MMの期末処理の順序がさらに重要になります。製造指図の決済が終わっていないと、品目元帳の締め処理(CKMLCP)が正しく機能しないためです。