能力計画は、「その計画は本当に実行できるのか」を検証する仕組みです。MRPは部材の過不足を計算しますが、設備や人が足りるかどうかは見ていません。その穴を埋めるのが能力計画です。
MRPの限界
MRPは無限能力を前提に計算します。つまり、「必要な日に必要な量を作れる」という仮定のもとで手配を提案します。
その結果、ある日に3日分の生産が集中するような計画が出てくることがあります。部材は揃うが設備が回らない——この矛盾を発見し、調整するのが能力計画の役割です。
能力所要量の計算
能力所要量は、作業手順の標準値と生産数量から計算されます。
製造指図: 製品X を 200個
作業手順: 段取 1.0時間(固定)
機械 0.05時間/個
能力所要量 = 1.0 + (0.05 × 200) = 11.0 時間段取時間はロットサイズによらず固定、加工時間は数量に比例します。この2つを合算したものが、その工程に必要な時間です。
利用可能能力
一方、作業場所には利用可能能力が定義されています。作業場所マスタの能力タブで設定します。
| 要素 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 稼働開始・終了時刻 | 1日の操業時間 | 8:00〜17:00 |
| 休憩時間 | 操業時間から差し引く | 1時間 |
| 稼働率 | 実際に稼働できる割合 | 85% |
| 個別能力数 | 同じ設備が何台あるか | 3台 |
| 稼働日カレンダ | 稼働する日 | 土日祝を除く |
操業時間 9時間 − 休憩 1時間 = 8時間
8時間 × 稼働率 85% = 6.8時間
6.8時間 × 個別能力数 3台 = 20.4時間/日能力評価と平準化
能力所要量と利用可能能力を比較して、過負荷になっている期間を可視化するのが能力評価(CM01など)です。
| Tコード | 内容 |
|---|---|
| CM01 | 作業場所別の負荷(標準表示) |
| CM02 | 受注別の負荷 |
| CM05 | 過負荷の作業場所のみ表示 |
| CM21 | 能力平準化(計画表による調整) |
| CM25 | 能力平準化(グラフィカル) |
過負荷が見つかったら、平準化(Leveling)で調整します。調整の手段は、指図の日程を前後にずらす、別の作業場所に振り替える、残業や休日出勤で能力を増やす、外注に出すといった選択肢です。
スケジューリング
製造指図の各工程がいつ実行されるかは、スケジューリングによって決まります。
| 方式 | 起点 | 内容 |
|---|---|---|
| 後方スケジューリング | 納期 | 納期から逆算して開始日を求める。最も一般的 |
| 前方スケジューリング | 開始日 | 開始日から順算して完了日を求める |
| 現在日スケジューリング | 当日 | 後方で計算した開始日が過去になる場合、当日起点に切り替える |
| のみスケジューリング | — | 能力所要量だけ計算し、日程は決めない |
標準は後方スケジューリングです。納期から逆算していき、開始日が過去の日付になってしまう場合は、自動的に現在日スケジューリングへ切り替わります。この場合、納期に間に合わないことを意味するため、警告が表示されます。
ボトルネック工程への着目
すべての作業場所を厳密に計画する必要はありません。全体の生産量を決めているのは、最も能力の逼迫している工程(ボトルネック)だからです。
作業場所マスタで「能力所要量を生成するかどうか」を工程ごとに制御できるため、ボトルネック工程だけを能力計画の対象とする運用が現実的です。すべての工程を対象にすると、データ量と調整工数が膨らみ、かえって計画が回らなくなります。