SD(Sales and Distribution/販売管理)は、顧客からの引き合いに始まり、受注、出荷、請求を経て代金を回収するまでの販売プロセスを支えるモジュールです。企業の収益が生まれる場所であり、それゆえ他の多くのモジュールと接続しています。
標準的な販売プロセス
典型的な流れは次のようになります。すべての段階を必ず経るわけではなく、繰り返し注文であれば照会や見積を飛ばして受注から始まります。
| 段階 | 伝票 | Tコード | 何が起きるか |
|---|---|---|---|
| 引き合い | 照会(Inquiry) | VA11 | 顧客からの問い合わせを記録する |
| 見積提示 | 見積(Quotation) | VA21 | 価格と納期を提示し、有効期限を設定する |
| 受注 | 受注伝票(Sales Order) | VA01 | 注文を確定し、在庫を引き当てる |
| 出荷準備 | 出荷伝票(Delivery) | VL01N | ピッキング・梱包を指示する |
| 出庫 | 在庫転記 | VL02N | 在庫が減り、売上原価が立つ |
| 請求 | 請求伝票(Billing) | VF01 | 売掛金と売上が立つ |
| 入金 | FI伝票 | F-28 | 売掛金が消し込まれる |
伝票フローという考え方
SDの伝票は独立して存在するのではなく、前の伝票を参照して作られます。受注伝票から出荷伝票を作り、出荷伝票から請求伝票を作る——この参照の連鎖が伝票フローです。
伝票フローがあることで、どの伝票からでも前後の伝票を辿れます。受注画面から「この注文はもう出荷されたか、請求は済んだか」が確認でき、請求書から「元の注文はどれか」を遡れます。VA03の伝票フロー表示ボタンが、実務で最も使われる機能の1つです。
他モジュールとの接点
SDは単独では完結しません。プロセスの各段階で、他モジュールの世界が動きます。
| SDでの操作 | 連動するモジュール | 起きること |
|---|---|---|
| 受注登録 | MM(在庫) | 在庫の引当(ATPチェック)が行われる |
| 受注登録 | FI(与信) | 与信限度額のチェックが行われる |
| 受注登録 | PP(生産) | 受注生産の場合、所要量が生成される |
| 出庫転記 | MM(在庫) | 在庫数量が減少する |
| 出庫転記 | FI | 売上原価と在庫の仕訳が立つ |
| 請求転記 | FI | 売掛金と売上高の仕訳が立つ |
| 請求転記 | CO-PA | 製品別・顧客別の収益性データが生成される |
注目したいのは、出庫と請求で会計仕訳が2回立つ点です。出庫の時点で「在庫が減って売上原価が立つ」、請求の時点で「売掛金が立って売上が上がる」。この2つは別のイベントであり、タイミングがずれることもあります。
伝票の3階層構造
SD伝票は、ヘッダ・明細・納期スケジュールという3つの階層を持ちます。
| 階層 | 保持する情報 | 例 |
|---|---|---|
| ヘッダ | 伝票全体に共通する情報 | 受注先、伝票日付、支払条件、通貨、販売エリア |
| 明細 | 商品ごとの情報 | 品目コード、数量、価格、プラント、出荷先 |
| 納期スケジュール | 納期ごとの数量 | 確認納期、確認数量。分割納入に対応 |
納期スケジュールという階層があるのは、1つの明細を複数回に分けて納品することがあるためです。「100個の注文のうち、60個は今週、40個は来月」といった状況を、明細を分けずに表現できます。