販売した商品が返ってくる、あるいは請求金額を後から修正する——こうした「戻り」の処理は、通常の販売プロセスとは別の伝票タイプで扱われます。
3つのパターン
まず、何が戻ってくるのかを整理します。商品が戻るのか、お金だけが戻るのかで、使う伝票が変わります。
| 状況 | 使う伝票 | 在庫 | 会計 |
|---|---|---|---|
| 商品が返品される | 返品伝票(RE) | 在庫が戻る | 売上と売掛金が減る |
| 商品はそのまま、金額だけ減額 | クレジットメモ依頼(CR) | 変化なし | 売上と売掛金が減る |
| 金額を追加請求 | デビットメモ依頼(DR) | 変化なし | 売上と売掛金が増える |
品質不良で商品を回収する場合は返品、価格の誤りや事後値引きは金額だけの調整なのでクレジットメモ、請求漏れや追加費用の請求はデビットメモ、という使い分けです。
返品プロセスの流れ
返品は、通常の販売プロセスを逆向きに辿る形になります。
| 順序 | 処理 | Tコード | 内容 |
|---|---|---|---|
| 1 | 返品伝票の作成 | VA01(伝票タイプRE) | 元の請求伝票を参照して作成 |
| 2 | 返品納入伝票の作成 | VL01N | 受け入れる数量を確定 |
| 3 | 入庫転記 | VL02N | 在庫が戻る。売上原価が戻る |
| 4 | 請求ブロックの解除 | VA02 | 承認後にブロックを外す |
| 5 | クレジットメモの発行 | VF01 | 売上と売掛金が減る |
返品在庫の扱い
返品された商品を、そのまま販売可能な在庫に戻してよいとは限りません。検品してから判断すべきケースが多くあります。
SAPでは、返品在庫をいったんブロック在庫として受け入れ、検品後に利用可能在庫へ移動する運用が可能です。移動タイプ651(ブロック在庫として受入)と653(利用可能在庫として受入)を使い分けます。
- 移動タイプ651:返品在庫(ブロック)として受け入れる。販売可能在庫には含まれない
- 移動タイプ653:直接、利用可能在庫として受け入れる
- 検品後に移動タイプ453などでブロック在庫から利用可能在庫へ振り替える
請求ブロックによる統制
返品伝票、クレジットメモ依頼、デビットメモ依頼には、既定で請求ブロックが設定されます。これは重要な内部統制の仕組みです。
クレジットメモは売上を減らす処理であり、不正の温床になりやすいためです。営業担当者が単独で発行できないよう、上長や管理部門の承認を経てブロックを解除する運用にします。
理由コード
返品やクレジットメモには、理由コード(Order Reason)を設定します。「品質不良」「誤出荷」「顧客都合」「価格誤り」といった分類を整備しておくと、原因分析ができます。
返品率が高い製品はどれか、誤出荷はどの倉庫で多いか、といった分析は品質改善の起点になります。理由コードを形式的に入力させるだけでなく、定期的に集計して現場にフィードバックする運用が重要です。
請求伝票の取消
請求そのものが誤っていた場合は、クレジットメモではなく請求伝票の取消(VF11)を使います。取消はFIの伝票も含めて元に戻す処理であり、そもそも請求がなかった状態にします。
一方、クレジットメモは「請求は正しく行われたが、その後に減額した」という記録を残します。どちらを使うかは、取引の実態がどちらに近いかで判断します。顧客に請求書を送付済みであれば、通常はクレジットメモを使います。