照会(Inquiry)と見積(Quotation)は、受注が確定する前の商談段階を記録する伝票です。SDでは引合伝票(Pre-sales Document)と総称されます。
なぜ受注前の伝票が必要か
受注だけを記録していると、「受注に至らなかった商談」が一切データに残りません。引合伝票を使うことで、次のような分析が可能になります。
- 見積を出した件数に対して、何件が受注に至ったか(成約率)
- 失注した商談は、なぜ失注したのか(理由コードによる分析)
- どの製品の引き合いが増えているか(需要の先行指標)
- 見積から受注までの平均リードタイム
照会と見積の違い
| 観点 | 照会(Inquiry) | 見積(Quotation) |
|---|---|---|
| 意味 | 顧客からの問い合わせ | 自社からの正式な提示 |
| 伝票タイプ | IN | QT |
| Tコード | VA11 / VA12 / VA13 | VA21 / VA22 / VA23 |
| 価格 | 参考価格を計算 | 提示価格を確定 |
| 有効期限 | 任意 | 通常は設定する |
| 法的拘束力 | なし | 有効期限内は提示条件に拘束される |
実務では、照会を省いて見積から始める運用も多くあります。特にBtoBの繰り返し取引では、既存の価格条件があるため見積すら省いて受注から入ることが一般的です。
有効期限の管理
見積には有効開始日と有効終了日を設定します。この期間を過ぎた見積は、受注への変換時に警告が表示されます。
有効期限を設定する意味は、価格の変動リスクを限定することにあります。原材料価格が変動する商材では、有効期限を短く設定することでリスクを抑えます。
見積から受注への変換
顧客が発注してきたら、見積を参照して受注伝票を作成します。VA01の登録画面で「販売伝票の作成(参照付き)」を選び、見積番号を指定します。
参照して作成することで、見積の内容が受注に引き継がれ、同時に伝票フローが形成されます。これにより、「この受注はどの見積から生まれたか」を追跡でき、成約率の分析が可能になります。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 全明細をコピー | 見積の全内容をそのまま受注にする |
| 明細を選択 | 一部の明細だけを受注化する |
| 数量を変更 | 見積より少ない数量で受注する |
部分的に受注化した場合、見積の残りの明細は引合残として残ります。完了処理を行うか、後日追加受注として消化することになります。
失注理由の記録
受注に至らなかった見積には、理由コード(Reason for Rejection)を設定します。これを設定すると、その明細は引合残から除外され、同時に失注理由が記録されます。
「価格が高い」「納期が合わない」「競合他社に決定」といった理由コードを整備しておくと、失注分析が可能になります。値引きの判断や納期改善の優先順位づけに活用できる情報です。