与信管理は、顧客の支払能力を超える取引を未然に防ぐ仕組みです。売上を追求する営業と、回収リスクを抑える経理の、利害が衝突しやすい領域でもあります。
与信限度額とは何と比較されるか
与信限度額は単に売掛金残高と比較されるのではありません。まだ請求していない受注や出荷も、将来の債権として計算に含まれます。
| 要素 | 内容 | 状態 |
|---|---|---|
| 売掛金残高 | 請求済みで未回収の金額 | 確定した債権 |
| 未請求出荷額 | 出荷したが請求していない金額 | 請求待ち |
| 未出荷受注額 | 受注したが出荷していない金額 | 出荷待ち |
| 特殊仕訳 | 手形など | 設定により含める |
これらの合計が与信エクスポージャであり、これが与信限度額を超えると与信チェックに引っかかります。受注時点でチェックすることに意味があるのは、まだ商品を渡していない段階で止められるからです。
与信管理領域
与信管理領域(Credit Control Area)は、与信を管理する単位です。1つの与信管理領域に複数の会社コードを割り当てることができ、グループ全体で1つの限度額を管理することも、会社ごとに分けることも可能です。
「A社に対する与信限度額をグループ全体で1億円とする」という管理をしたい場合、複数の会社コードを1つの与信管理領域にまとめます。
チェックのタイミングと種類
与信チェックは複数のタイミングで実行でき、それぞれ止められる範囲が異なります。
| タイミング | 止まるもの | 効果 |
|---|---|---|
| 受注登録時 | 受注が保存できない、または保留になる | 最も早い段階で止められる |
| 出荷伝票作成時 | 出荷伝票が作れない | 商品が倉庫から出る前に止まる |
| 出庫転記時 | 在庫が減らない | 最後の砦 |
チェックの厳しさも設定できます。単純チェックは限度額との比較のみ、自動チェックは支払期日超過の有無や与信情報の更新日なども考慮します。
ブロックの確認と解除
与信でブロックされた伝票は、VKM1(ブロックされた販売伝票一覧)で確認します。与信担当者が内容を確認し、解除するか、そのまま保留するかを判断します。
| Tコード | 用途 |
|---|---|
| FD32 / UKM_BP | 与信限度額の設定(ECC / S/4) |
| VKM1 | ブロックされた販売伝票の一覧と解除 |
| VKM3 | 受注伝票の与信状況照会 |
| VKM4 | すべての販売伝票の与信状況照会 |
| F.31 | 与信管理レポート |
S/4HANAでの与信管理
S/4HANAでは、従来のFI-AR与信管理は廃止され、FSCM(Financial Supply Chain Management)のクレジットマネジメントに一本化されました。
新しい仕組みでは、与信限度額を手動で設定するだけでなく、支払履歴や外部の信用情報にもとづいて与信スコアを算出し、限度額を自動的に決定するルールを組めます。与信情報はビジネスパートナのマスタで管理され、UKM_BPで保守します。
ECCからの移行では、与信マスタと設定の作り直しが必要です。単純な移送では済まないため、移行プロジェクトでは工数を見込んでおく必要があります。