予算は、プロジェクトに使ってよい金額の上限を定めるものです。原価計画と混同されやすいのですが、性質がまったく異なります。
原価計画と予算の違い
| 観点 | 原価計画 | 予算 |
|---|---|---|
| 性質 | 「いくらかかる見込みか」の見積もり | 「いくらまで使ってよいか」の承認額 |
| 決定者 | プロジェクト担当者 | 経営層・予算承認者 |
| 変更 | 随時見直してよい | 正式な手続きが必要 |
| 統制力 | なし。超えても止まらない | あり。超過を止められる |
| Tコード | CJ40 / CJR2 | CJ30 |
原価計画はあくまで見通しであり、実績が計画を超えても何も起こりません。一方、予算には統制の機能があり、超過しようとすると警告またはエラーが発生します。
予算の配分
予算は、WBS階層に沿って上位から下位へ配分します。CJ30で入力します。
レベル1: 第2工場建設 1,000,000 千円
レベル2: 土木・基礎工事 300,000 千円
レベル2: 建屋建設 400,000 千円
レベル2: 設備導入 300,000 千円
─────────────
合計 1,000,000 千円下位の合計が上位の予算を超えることは、原則としてできません。この制約により、階層全体での整合が保たれます。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 当初予算 | 最初に承認された予算 |
| 補正予算(Supplement) | 追加で承認された予算 |
| 返却(Return) | 使わない予算を上位へ返す |
| 振替(Transfer) | WBS要素間で予算を移動する |
| 現在予算 | 当初 + 補正 − 返却 ± 振替 |
可用性コントロール
可用性コントロール(Availability Control)は、予算の超過を検知して処理を止める仕組みです。PSの予算管理の中核となる機能です。
「割当(Assigned Value)」が予算に近づくと、設定した閾値で警告やエラーが発生します。割当には、実績原価だけでなくコミットメント(購買発注などの発生予定額)も含まれます。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 実績原価 | 既に発生した費用 |
| コミットメント | 購買依頼・購買発注による発生予定額 |
| 決済済み額 | 他へ振り替えた額(マイナス要素) |
許容度限界(Tolerance Limit)
可用性コントロールの挙動は、許容度限界の設定で制御します。使用率に応じて段階的な対応を定義できます。
| 使用率 | アクション |
|---|---|
| 80% | 警告メッセージを表示 |
| 90% | 警告メッセージ+担当者へメール通知 |
| 100% | エラー。処理を中断する |
アクションには、警告のみ、警告+メール、エラーの3種類があります。すべてをエラーにすると業務が止まるため、段階的に設定するのが現実的です。
予算超過時の対応
実際に予算を超えそうになった場合、いくつかの選択肢があります。
- 補正予算を申請し、承認を得て追加配分する
- 他のWBS要素から予算を振り替える(全体枠は変えない)
- スコープを見直し、支出を抑える
- 一時的に許容度限界を緩める(統制上は望ましくない)
重要なのは、予算超過が「異常」として検知され、意思決定の場に上がる仕組みがあることです。気づかないうちに超過しているという状態が最も危険であり、可用性コントロールはそれを防ぐためにあります。