MM(Materials Management/購買・在庫管理)は、企業がモノを調達し、在庫として管理し、必要な場所へ払い出すまでを支えるモジュールです。製造業では生産の前提となり、小売業では商品仕入れそのものであり、あらゆる業種で使われます。
調達プロセスの全体像
標準的な調達の流れは次のようになります。すべての段階を必ず経るわけではなく、少額の購入では購買依頼を省くこともあります。
| 段階 | 伝票 | Tコード | 何が起きるか |
|---|---|---|---|
| 所要量の発生 | 購買依頼(PR) | ME51N | 必要なものを申請する。MRPが自動生成することも |
| 仕入先の選定 | 見積依頼/見積 | ME41 / ME47 | 複数社に見積を依頼し比較する |
| 発注 | 購買発注(PO) | ME21N | 仕入先に正式に注文する |
| 入庫 | 入庫伝票 | MIGO | 在庫が増える。GR/IR勘定が立つ |
| 請求照合 | 請求書伝票 | MIRO | 3点照合を行い、買掛金が立つ |
| 支払 | FI伝票 | F110 | 買掛金が消し込まれる |
3点照合という考え方
MMの内部統制の核となるのが3点照合(Three-Way Match)です。発注、入庫、請求書という3つの情報を突き合わせ、すべてが整合していることを確認してから支払に進みます。
| 書類 | 記録される内容 | 確認すること |
|---|---|---|
| 購買発注(PO) | 何を、いくらで、何個買うと約束したか | 契約内容 |
| 入庫(GR) | 実際に何個届いたか | 納品の事実 |
| 請求書(IR) | 仕入先が何個分、いくら請求したか | 請求の妥当性 |
数量や金額が許容範囲を超えてずれていれば、SAPは請求書に照合ブロックをかけ、支払対象から外します。届いていない商品の請求書を支払ってしまう、あるいは同じ請求書を二重に支払ってしまう——こうした事故を構造的に防ぐ仕組みです。
GR/IR勘定の役割
入庫と請求書の到着にはタイムラグがあります。商品は届いたが請求書はまだ、あるいはその逆という状況が日常的に起こります。
このずれを吸収するのがGR/IR勘定(入庫請求仮勘定)です。入庫時にはまだ仕入先が特定の債務として確定していないため、いったん中間勘定に置きます。
【入庫時】
(借)原材料在庫 100,000
(貸)GR/IR勘定 100,000
【請求照合時】
(借)GR/IR勘定 100,000
(貸)買掛金 100,000両方が揃えばGR/IR勘定の残高は消えます。残高が残っているということは、入庫か請求書のどちらかが未了だという意味であり、決算時の分析対象になります。
MMを構成する領域
| 領域 | 扱う内容 |
|---|---|
| 購買(Purchasing) | 購買依頼、発注、契約、仕入先評価 |
| 在庫管理(Inventory Management) | 入出庫、在庫の移動、棚卸 |
| 請求書照合(Invoice Verification) | 請求書の受入と3点照合 |
| 所要量計画(MRP) | 在庫と所要量から発注提案を生成する |
| 評価(Valuation) | 在庫の金額評価と会計への転記 |
他モジュールとの接点
MMは、SD以上に他モジュールとの結びつきが強い領域です。
| 接続先 | 連携内容 |
|---|---|
| FI | 入庫と請求照合で会計伝票が自動生成される |
| CO | 消費の際に原価センタや指図へ原価が流れる |
| PP | 製造指図の部品所要量がMRPで購買依頼になる |
| SD | 販売した商品の在庫が引き当てられ、出庫で減る |
| QM | 入庫した品目が品質検査へ回される |