品目マスタは、SAP全体で最も多くのモジュールから参照されるマスタデータです。購買、在庫、生産、販売、会計のすべてが同じ品目マスタを見ており、それゆえビューという形で情報が分割されています。
ビューという構造
品目マスタは、部門ごとに必要な情報をビューとして分けて保持します。1つの品目に対して、すべてのビューを作る必要はありません。購買しない品目に購買ビューは不要です。
| ビュー | 主な項目 | 使う部門 |
|---|---|---|
| 基本データ | 品目テキスト、基本数量単位、品目グループ、重量 | 全社共通 |
| 購買 | 購買グループ、発注単位、入庫処理期間、自動発注可否 | 購買 |
| MRP 1〜4 | MRPタイプ、ロットサイズ、安全在庫、調達タイプ、計画納期 | 生産計画 |
| 販売 | 販売単位、出荷条件、品目統計グループ、税分類 | 営業 |
| 保管 | 保管条件、有効期限、バッチ管理の要否 | 倉庫 |
| 品質管理 | 検査タイプ、検査設定 | 品質保証 |
| 会計 | 評価クラス、価格管理、標準価格または移動平均価格 | 経理 |
| 原価計算 | 原価計算対象か、ロットサイズ、特殊調達 | 管理会計 |
組織レベルごとの保持
同じビューでも、どの組織単位ごとに値を持つかが異なります。これが品目マスタを理解するうえで最も重要な点です。
| レベル | 保持されるビュー | 意味 |
|---|---|---|
| クライアント | 基本データ | 全社で共通。品目名や基本単位 |
| プラント | 購買、MRP、原価計算 | 拠点ごとに設定が変わる |
| 保管場所 | 在庫数量 | 倉庫ごとの在庫 |
| 評価エリア | 会計 | 通常はプラント単位。評価クラスと価格 |
| 販売組織・流通チャネル | 販売 | 販売経路ごとに条件が変わる |
同じ品目でも、プラントAでは自社生産(調達タイプE)、プラントBでは外部購買(調達タイプF)という設定が可能です。プラントごとにMRPビューを持つからこそ、こうした使い分けができます。
品目タイプ
品目タイプ(Material Type)は、その品目の性格を表す分類で、どのビューを作れるか、在庫を数量と金額の両方で管理するかなどを制御します。
| タイプ | 意味 | 在庫管理 |
|---|---|---|
| ROH | 原材料 | 数量・金額とも管理 |
| HALB | 半製品 | 数量・金額とも管理 |
| FERT | 製品 | 数量・金額とも管理 |
| HAWA | 商品(仕入れて売る) | 数量・金額とも管理 |
| VERP | 包装材 | 数量・金額とも管理 |
| NLAG | 非在庫品目 | 在庫管理しない。購入即消費 |
| DIEN | サービス | 在庫の概念がない |
| UNBW | 価値なし品目 | 数量のみ管理。金額管理なし |
事務用品のように、購入したらすぐ消費して在庫として管理しないものはNLAGを使います。この場合、購入時に直接費用として計上され、在庫勘定を経由しません。
評価クラスと勘定決定
会計ビューの評価クラス(Valuation Class)は、MMとFIをつなぐ最も重要な設定です。在庫の増減がどの総勘定元帳勘定に転記されるかを、この値が決めます。
「原材料は勘定150000、製品は勘定151000」といった対応を、評価クラス経由で定義します。設定はOBYCで行い、移動タイプと評価クラスの組み合わせから転記先勘定が決まる仕組みです。
価格管理
会計ビューの価格管理(Price Control)は、在庫をどう評価するかを決めます。
| 方式 | 記号 | 挙動 |
|---|---|---|
| 標準価格 | S | 常に固定の標準価格で評価。差額は価格差異勘定へ |
| 移動平均価格 | V | 入庫のたびに加重平均を再計算。在庫評価額が変動する |
自社製造品には標準価格(S)を使うのが一般的です。標準原価との差異を分析できるためです。購入品には移動平均価格(V)を使い、実際の購入価格を反映させる運用が多く見られます。