在庫は、数量だけでなく金額でも管理されます。この金額をどう決めるか、そして在庫が動いたときにどの勘定に転記するかが、MMとFIの接点になります。
2つの評価方式
品目マスタの会計ビューで設定する価格管理により、在庫の評価方法が決まります。
| 観点 | 標準価格(S) | 移動平均価格(V) |
|---|---|---|
| 評価額 | 常に固定の標準価格 | 入庫のたびに加重平均を再計算 |
| 購入価格との差 | 価格差異勘定に転記 | 在庫評価額に吸収される |
| 在庫単価の安定性 | 安定している | 変動する |
| 差異分析 | 可能。標準との差が明確 | 困難。差が在庫に埋もれる |
| 向いている品目 | 自社製造品、標準原価管理したい品目 | 購入品、市況で価格が変動する品目 |
標準価格の利点は、在庫評価額が安定し、購入価格の変動が差異として可視化されることです。移動平均価格の利点は、実際の取得原価に近い評価ができることです。
既存在庫: 100個 @ 1,000円 = 100,000円
新規入庫: 50個 @ 1,300円 = 65,000円
─────────────────────────────────
合計: 150個 = 165,000円
新しい移動平均価格 = 165,000 ÷ 150 = 1,100円移動タイプ
移動タイプ(Movement Type)は3桁の数字で、在庫がどう動いたかを表します。MMで最も頻繁に登場するコードであり、これが会計転記を決定します。
| タイプ | 意味 | 在庫への影響 |
|---|---|---|
| 101 | 購買発注に対する入庫 | 増加 |
| 102 | 101の取消 | 減少 |
| 122 | 仕入先への返品 | 減少 |
| 201 | 原価センタへの出庫 | 減少 |
| 261 | 製造指図への出庫 | 減少 |
| 301 | プラント間の在庫移動(1ステップ) | プラント間で移動 |
| 311 | 保管場所間の在庫移動 | 保管場所間で移動 |
| 501 | 発注なしの入庫 | 増加 |
| 601 | SD出荷による出庫 | 減少 |
| 701 | 棚卸差異(増加) | 増加 |
| 702 | 棚卸差異(減少) | 減少 |
勘定決定(OBYC)
在庫が動いたとき、どの総勘定元帳勘定に転記するかを決めるのが勘定決定です。設定はOBYCで行います。
転記先の勘定は、複数の要素の組み合わせから決まります。
- 移動タイプ:どういう動きか(入庫か、消費か、移動か)
- 転記キー(Transaction Key):移動タイプから導かれる会計的な意味。BSX(在庫)、WRX(GR/IR)、PRD(価格差異)、GBB(相手勘定)など
- 評価クラス:品目マスタの会計ビューで設定した分類
- 勘定修正(Account Modifier):GBBなどで、さらに細かく分岐させるための記号
| キー | 意味 |
|---|---|
| BSX | 在庫勘定 |
| WRX | GR/IR勘定(入庫請求仮勘定) |
| PRD | 価格差異 |
| GBB | 相手勘定(消費、棚卸差異など) |
| BSV | 在庫振替の相手勘定 |
| UMB | 評価替えによる差額 |
品目元帳(Material Ledger)
品目元帳は、在庫を複数通貨で評価したり、実際原価計算を行ったりするための機能です。S/4HANAでは標準で有効化されています。
実際原価計算を有効にすると、期中は標準価格で処理しつつ、期末に実際の購入価格や製造原価にもとづいて在庫と消費を再評価できます。標準価格の安定性と実際原価の正確性を両立させる仕組みです。