帳簿上の在庫と実際の在庫は、時間とともに必ずずれます。破損、紛失、記帳漏れ、誤出庫といった原因が積み重なるためです。棚卸は、この差異を発見して帳簿を実態に合わせる作業です。
棚卸の方式
| 方式 | 内容 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|---|
| 実地棚卸(一斉棚卸) | 期末に全品目を一度に数える | 基準日が明確 | 業務を止める必要がある |
| 循環棚卸 | 品目を分散させて年間を通じて数える | 業務を止めずに済む | 運用設計が必要 |
| 継続棚卸 | 在庫がゼロになったタイミングで数える | 手間が少ない | 対象品目が限られる |
| サンプル棚卸 | 一部を抽出して数え、統計的に推定する | 工数が少ない | 統計的な前提が必要 |
日本では期末の一斉棚卸が一般的ですが、品目数が多い企業では循環棚卸を採用することで、業務停止を避けつつ精度を維持する運用が広がっています。
棚卸プロセスの流れ
| 順序 | 処理 | Tコード | 内容 |
|---|---|---|---|
| 1 | 棚卸伝票の作成 | MI01 | 対象の品目・保管場所を指定して伝票を作る |
| 2 | 棚卸票の印刷 | MI21 | 現場で使う用紙を出力 |
| 3 | 実地カウント | — | 現場で実際の数量を数える |
| 4 | カウント結果の入力 | MI04 | 数えた数量をSAPに入力 |
| 5 | 差異リストの確認 | MI20 | 帳簿と実地の差を確認 |
| 6 | 再カウント(必要時) | MI11 | 大きな差異があれば数え直す |
| 7 | 差異の転記 | MI07 | 帳簿在庫を実地在庫に合わせる |
差異の転記と会計処理
差異を転記(MI07)すると、帳簿在庫が実地在庫に修正され、同時に会計伝票が生成されます。移動タイプ701(増加)または702(減少)が使われます。
(借)棚卸差損 50,000
(貸)原材料在庫 50,000差異が大きい場合は、原因を分析する必要があります。特定の品目や保管場所に差異が集中しているなら、そこに業務上の問題がある可能性が高いためです。
循環棚卸の設計
循環棚卸では、品目を重要度で分類し、重要な品目ほど頻繁に数えます。この分類にABC分析を使います。
| 区分 | 品目数の割合 | 金額の割合 | 棚卸頻度 |
|---|---|---|---|
| A | 約10% | 約70% | 年4回 |
| B | 約20% | 約20% | 年2回 |
| C | 約70% | 約10% | 年1回 |
金額の大きい品目に工数を集中させることで、限られた人員で在庫精度を維持できます。ABC区分は品目マスタのプラントビューに設定し、MIBCで循環棚卸の対象を自動抽出します。
特殊在庫の棚卸
コンサインメント在庫や外注先に支給した在庫も、棚卸の対象になります。これらは特殊在庫として管理されているため、棚卸伝票の作成時に特殊在庫表示を指定する必要があります。
外注先に支給した部品は自社の資産であり、貸借対照表に計上されています。したがって、実在性を確認する義務があります。外注業者に依頼して数えてもらうか、自社で往査するかは、金額の重要性に応じて判断します。