外貨が絡む会計処理は、2つの局面に分けて考えると整理できます。1つは取引が発生したときの換算、もう1つは決算時点での評価替えです。この2つを混同すると理解が難しくなります。
SAPが扱う3つの通貨
SAPは1つの伝票に対して複数の通貨額を同時に保持します。どの通貨で見るかによって、同じ取引が違う金額で表示されます。
| 通貨の種類 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 取引通貨 | 取引が実際に行われた通貨 | USD建ての輸入取引ならUSD |
| 会社コード通貨 | 会社コードの帳簿通貨。財務諸表の表示通貨 | 日本法人ならJPY |
| グループ通貨 | 連結報告に使う通貨 | 親会社が米国ならUSD |
外貨建取引を転記すると、SAPは取引通貨の金額を会社コード通貨に自動換算し、両方を伝票に保存します。財務諸表は会社コード通貨で作成されるため、この換算結果が帳簿価額になります。
為替レートタイプ
換算に使うレートは、目的によって使い分けます。SAPではレートタイプという単位でレートを管理し、伝票タイプや評価方法ごとにどのタイプを使うかを指定します。
| タイプ | 名称 | 主な用途 |
|---|---|---|
| M | 標準換算レート(平均) | 日常の伝票転記。既定値 |
| B | 銀行買レート | 外貨を売却する取引の評価 |
| G | 銀行売レート | 外貨を購入する取引の評価 |
| P | 計画レート | 予算作成、計画値の換算 |
レートはOB08で登録します。レートタイプ・通貨ペア・有効開始日の組み合わせで管理され、転記時にはその日付以前で最新の有効なレートが自動的に適用されます。
実現差損益と未実現差損益
為替差損益には性質の異なる2種類があります。この区別が、外貨評価を理解する鍵になります。
- 実現差損益(Realized):債権や債務が実際に決済されたときに確定する差額です。100万円相当のUSD建て売掛金が、入金時に105万円相当になっていれば、5万円の為替差益が確定します。消込処理の中で自動的に計上されます。
- 未実現差損益(Unrealized):決算日時点でまだ決済されていない外貨建残高を、期末レートで評価替えしたときに生じる差額です。まだ確定していないため、翌期首に戻し入れる(洗替)のが一般的です。
期末の外貨評価
決算時には、外貨建の未決済残高を期末レートで評価し直します。この処理をFAGL_FCV(新総勘定元帳の場合)で実行します。
評価の対象になるのは、外貨建の売掛金・買掛金・外貨預金といった残高です。評価差額は「為替差損」または「為替差益」としてP/Lに計上され、相手勘定として貸借対照表側に評価調整勘定が立ちます。
| 設定要素 | 決めること |
|---|---|
| 評価方法(Valuation Method) | 使用するレートタイプ、評価対象(差損のみか差損益両方か)、洗替の要否 |
| 評価領域(Valuation Area) | 評価結果を記録する区分。会計基準ごとに分けられる |
| 勘定設定 | 為替差損益をどの科目に、評価調整をどの科目に転記するか |
換算と評価の違いをもう一度
最後に整理します。取引時の「換算」は、外貨額を帳簿通貨に置き換える作業であり、その時点のレートで金額が確定します。決算時の「評価」は、既に帳簿に載っている外貨建残高を、その時点の実勢レートで見直す作業です。
前者は取引のたびに必ず行われ、後者は決算という特定のタイミングでのみ行われます。そして後者で生じた差額は、決済が済むまでは未確定のものとして扱われます。この構造を押さえておけば、外貨まわりの処理はおおむね読み解けます。