SAPで会計伝票を起票すると、必ず「伝票タイプ」と「転記キー」という2つのコードが関わります。この2つはSAPの会計を理解するうえで避けて通れない概念であり、同時に初学者がつまずきやすいポイントでもあります。
伝票タイプ(Document Type)とは
伝票タイプは2桁の英字コードで、その伝票が「どういう性格の取引か」を表します。仕入先の請求書なのか、得意先からの入金なのか、単なる振替仕訳なのか——伝票タイプを見れば、その伝票の素性がわかります。
伝票タイプは単なるラベルではありません。伝票番号の採番範囲を決め、どの勘定タイプへの転記を許すかを制御し、参照項目の入力必須/任意を規定します。つまり、伝票タイプは伝票の振る舞いを決める設定項目です。
| コード | 用途 | 主な発生元 |
|---|---|---|
| SA | 総勘定元帳の振替仕訳 | FI(手入力) |
| AB | 汎用伝票(勘定タイプを問わない) | FI |
| KR | 仕入先請求書 | FI-AP(FB60) |
| KZ | 仕入先への支払 | FI-AP(F-53、F110) |
| KG | 仕入先クレジットメモ | FI-AP |
| DR | 得意先請求書 | FI-AR(FB70) |
| DZ | 得意先からの入金 | FI-AR(F-28) |
| DG | 得意先クレジットメモ | FI-AR |
| RE | 請求書照合による仕入先請求 | MM(MIRO) |
| RV | 販売請求書 | SD(VF01) |
| AA | 固定資産の取得・除売却 | FI-AA |
| AF | 減価償却の転記 | FI-AA(減価償却実行) |
MMからの請求書照合がKRではなくREで立つ点、SDからの請求がDRではなくRVで立つ点に注目してください。発生元モジュールごとに伝票タイプを分けておくことで、後から「この債務はどの業務プロセスで発生したのか」を伝票タイプだけで切り分けられます。
番号範囲(Number Range)
各伝票タイプには番号範囲が割り当てられており、転記時にその範囲内で伝票番号が採番されます。番号範囲は会計年度ごとに管理することも、年度をまたいで連続させることもできます。
会計伝票を一意に特定するには、伝票番号だけでは足りません。会社コード・会計年度・伝票番号の3つの組み合わせが必要です。異なる会社コードで同じ伝票番号が存在しうるためです。伝票照会(FB03)で最初にこの3項目を聞かれるのは、そのためです。
転記キー(Posting Key)
転記キーは2桁の数字で、伝票の各明細行が「借方か貸方か」と「どの勘定タイプに対する転記か」を同時に決定します。1行ごとに指定するもので、伝票ヘッダに1つだけ持つ伝票タイプとは階層が異なります。
| キー | 借貸 | 勘定タイプ | 典型的な用途 |
|---|---|---|---|
| 40 | 借方 | 総勘定元帳 | 費用の計上、資産の増加 |
| 50 | 貸方 | 総勘定元帳 | 収益の計上、負債の増加 |
| 21 | 借方 | 仕入先 | 仕入先への支払、買掛金の減少 |
| 31 | 貸方 | 仕入先 | 仕入先請求書の計上 |
| 01 | 借方 | 得意先 | 得意先請求書の計上 |
| 15 | 貸方 | 得意先 | 得意先からの入金、売掛金の減少 |
| 70 | 借方 | 固定資産 | 資産の取得 |
| 75 | 貸方 | 固定資産 | 資産の除売却 |
転記キーが制御するもう1つの要素
転記キーは借貸と勘定タイプを決めるだけでなく、明細行の入力画面に表示される項目(フィールドステータス)にも影響します。勘定科目マスタ側のフィールドステータスグループと組み合わさって、最終的にどの項目が入力必須・任意・非表示になるかが決まります。
「原価センタの入力を必須にしたいのに任意になっている」といった相談は、この2つの設定のどちらか、あるいは両方に起因します。フィールドステータスは、より制限の強い設定が優先される点も覚えておくとよいでしょう。
新しい入力画面では転記キーが見えない
FB50(総勘定元帳伝票入力)やFB60(仕入先請求書入力)といった、いわゆるエンジョイ画面では、転記キーを直接入力しません。借方/貸方をドロップダウンで選ぶだけで、SAPが内部的に適切な転記キーを割り当てます。
それでも転記キーの知識が必要なのは、F-02のような従来型の入力画面がいまも使われること、そして転記済み伝票をFB03で照会すると各明細に転記キーが表示されるためです。伝票を読み解くうえで、転記キーの意味は依然として必須の知識です。