SAPで会計を設計するとき、最初に決めるのが組織構造です。なかでも会社コード(Company Code)は、FIにおける最も重要な組織単位になります。
会社コードとは何か
会社コードは、SAPにおける独立した会計単位です。4桁のコードで表され、1つの会社コードに対して1セットの財務諸表(貸借対照表と損益計算書)が作成されます。法的な決算書を作成する必要がある単位、つまり実在する法人ごとに会社コードを設定するのが基本です。
グループ企業であれば、国内の親会社に1000、国内子会社に1100、海外子会社に2000といった具合に、複数の会社コードを1つのSAPシステム内に持たせます。会社コード間の取引は、それぞれの会社コードで独立した伝票として記録されます。
| 組織単位 | 役割 | 備考 |
|---|---|---|
| クライアント | システム全体の最上位単位 | マスタデータの共有範囲 |
| 会社コード | 独立した会計単位 | 財務諸表の作成単位。4桁 |
| 事業領域 | 会社コードを横断した内部報告単位 | 任意。近年はセグメント/利益センタで代替されることが多い |
| 管理領域 | COの管理単位 | 複数の会社コードを束ねられる |
| 与信管理領域 | 得意先の与信管理単位 | FI-AR/SDと関連 |
勘定科目表(Chart of Accounts)
勘定科目表は、使用する勘定科目の一覧を定義したものです。ここで重要なのが、勘定科目表は複数の会社コードで共有できるという点です。
グループ全体で同じ勘定科目表を使えば、すべての会社コードが同じ科目体系で記帳することになり、連結や比較が容易になります。一方、1つの会社コードに割り当てられる勘定科目表(業務用勘定科目表)は1つだけです。「1対多」の関係であることを、方向を取り違えないよう注意してください。
| 種類 | 目的 | 必須か |
|---|---|---|
| 業務用勘定科目表 | 日々の記帳に使用する主たる科目表 | 必須。会社コードに1つ割当 |
| 国別勘定科目表 | 各国の法定様式に合わせた科目表 | 任意。法定要件がある国で使用 |
| グループ勘定科目表 | 連結報告用の統一科目表 | 任意。連結決算を行う場合 |
勘定科目マスタの2層構造
勘定科目マスタは、勘定科目表レベルと会社コードレベルの2層で構成されています。この構造を理解しておくと、「なぜ同じ科目なのに会社によって設定が違うのか」という疑問が解けます。
| 階層 | 管理する主な情報 |
|---|---|
| 勘定科目表レベル | 勘定科目番号、勘定科目名称(短テキスト・長テキスト)、勘定科目グループ、貸借対照表科目か損益計算書科目かの区分 |
| 会社コードレベル | 勘定通貨、税区分、照合勘定タイプ、明細管理の要否、ソートキー、未決済管理の要否、転記可能かどうか |
つまり、科目の「名前と番号」はグループ共通、「どう使うか」は会社ごと、という分担です。たとえば同じ「現金」勘定でも、A社では明細管理を有効にし、B社では無効にする、といった運用が可能になります。
照合勘定(Reconciliation Account)
会社コードレベルの設定のうち、実務で特に重要なのが照合勘定タイプです。これは「この科目は補助元帳と紐づく科目である」ことを宣言する設定で、仕入先用(K)、得意先用(D)、資産用(A)などを指定します。
照合勘定に指定された科目には、直接仕訳を切ることができません。たとえば買掛金勘定に対してFB50で直接転記しようとしても、SAPはこれを拒否します。買掛金の残高は、必ず仕入先ごとの伝票(FI-AP)を経由して積み上がるべきだからです。
勘定科目グループの役割
勘定科目グループは、科目を性質ごとに分類し、使用できる番号の範囲と、マスタ登録時に表示・入力必須とする項目を制御します。たとえば「現預金」グループは100000〜109999、「売上高」グループは400000〜409999といった番号範囲を割り当てておくことで、科目番号を見ただけでおおよその性質が分かる体系を維持できます。
また、科目が貸借対照表科目か損益計算書科目かの区分も、勘定科目表レベルで指定します。損益計算書科目には利益剰余金勘定を紐づける必要があり、これは年度末の繰越処理で、当期損益を貸借対照表側へ振り替えるために使われます。