固定資産会計(Asset Accounting/FI-AA)は、建物・機械・車両といった固定資産のライフサイクルを管理する補助元帳です。取得から減価償却を経て除売却に至るまでを、資産1件ごとに追跡します。
資産クラス(Asset Class)
資産クラスは、固定資産を性質ごとに分類する最も重要な区分です。資産マスタを作成するとき、まず資産クラスを選びます。そのクラスに設定された内容が、新しい資産マスタの初期値として引き継がれます。
| 資産クラスが決めるもの | 内容 |
|---|---|
| 勘定設定(Account Determination) | 取得原価・減価償却累計額・減価償却費をどの総勘定元帳科目に転記するか |
| 番号範囲 | 資産番号の採番範囲 |
| 既定の減価償却キー | そのクラスで標準的に使う償却方法 |
| 既定の耐用年数 | 法定耐用年数など |
| 画面レイアウト | 資産マスタで入力必須とする項目 |
建設仮勘定(AuC)や低価値資産(LVA)も、専用の資産クラスとして設定します。低価値資産クラスでは、取得時に全額を費用処理する設定が可能です。
評価領域(Depreciation Area)
FI-AAを理解するうえで欠かせないのが評価領域という考え方です。同じ1つの資産について、目的の異なる複数の帳簿価額を並行して管理する仕組みです。
たとえば、会計基準上は定額法で10年償却するが、税務上は定率法で8年償却する、という状況を考えてください。1つの資産に対して2通りの減価償却計算が必要です。SAPはこれを、評価領域01(帳簿)と評価領域15(税務)のように分けて同時に計算します。
| 領域 | 目的 | 総勘定元帳への転記 |
|---|---|---|
| 01 | 帳簿(会計基準) | リアルタイムで転記 |
| 15 | 税務申告用 | 転記しない(統計的に保持) |
| 30 | グループ連結(IFRS等) | 別の元帳へ転記 |
すべての評価領域が総勘定元帳に転記されるわけではありません。税務用の領域は計算だけ行い、申告資料の作成に使うという運用が一般的です。
減価償却キー(Depreciation Key)
減価償却キーは、償却額をどう計算するかを定義するマスタです。定額法か定率法か、償却の開始タイミングをどうするか、残存価額をどう扱うかといった要素を、計算方法の組み合わせとして定義します。
減価償却キーと耐用年数の組み合わせで、毎期の償却額が自動計算されます。耐用年数は資産マスタの評価領域ごとに設定できるため、帳簿と税務で異なる年数を使うことも可能です。
ライフサイクルと主なトランザクション
| 局面 | Tコード | 内容 |
|---|---|---|
| 資産マスタ作成 | AS01 | 資産クラスを指定して資産番号を採番 |
| 取得(仕入先から購入) | F-90 | 仕入先請求と資産計上を同時に転記 |
| 取得(自動仕訳なし) | ABZON | 相手勘定を指定して資産を計上 |
| 建設仮勘定の振替 | AIAB / AIBU | 完成した資産へ振り替える |
| 減価償却の実行 | AFAB | 月次でまとめて償却を転記 |
| 除却(廃棄) | ABAVN | 売却収入なしで資産を落とす |
| 売却 | F-92 | 得意先への売却として処理 |
| 資産の照会 | AW01N | 資産エクスプローラ。計画値と実績値を一覧 |
減価償却実行の性質
減価償却実行(AFAB)は、資産ごとに個別の伝票を作るのではなく、勘定設定ごとに集計した伝票を作成します。資産の件数が多くても、生成される会計伝票は限られた数に収まります。
重要なのは、AFABが月次で必ず実行すべき決算処理だという点です。実行を飛ばした月があると、次回実行時にまとめて計上されるか、エラーとなります。決算スケジュールに固定的に組み込んでおくべき処理です。