決算処理は、FIの中で最も手順が重要な領域です。個々の処理そのものは難しくありませんが、実行する順序を誤ると財務諸表の数値が正しくなりません。ここでは全体の流れを把握することを目的とします。
月次決算と年次決算
決算には月次と年次があり、年次決算は月次決算の内容に加えて、年度をまたぐための追加処理を行います。
| 種類 | 主な目的 | 追加で行う処理 |
|---|---|---|
| 月次決算 | 当月の損益と残高を確定させる | — |
| 年次決算 | 年度の財務諸表を確定し、翌年度へ繋ぐ | 残高繰越、利益剰余金への振替、年度末の税務調整 |
月次決算の標準的な流れ
会社によって細部は異なりますが、おおむね次の順序で進みます。前の処理の結果が次の処理の前提になるため、順序には意味があります。
| 順序 | 処理 | 主なTコード | 目的 |
|---|---|---|---|
| 1 | 当月の業務転記を締め切る | — | MM/SDの期間クローズを含む |
| 2 | GR/IR残高の分析 | F.19 | 未着請求・未着品を振り替える |
| 3 | 前払・未払の振替 | FBS1 / F.81 | 期間帰属を調整する再振替仕訳 |
| 4 | 外貨建残高の評価 | FAGL_FCV | 期末レートで評価替えする |
| 5 | 減価償却の実行 | AFAB | 当月分の償却を計上 |
| 6 | COからFIへの配賦・振替 | — | 管理会計側の処理を反映 |
| 7 | 転記期間のクローズ | OB52 | 当月をクローズし翌月をオープン |
| 8 | 財務諸表の出力 | S_ALR_87012284 | 試算表・B/S・P/Lの確認 |
転記期間の開閉(OB52)
決算作業の実質的な締めくくりが、転記期間のクローズです。OB52では、勘定タイプ別・期間別・権限グループ別に、転記を許可する範囲を制御します。
実務では2つの期間帯を使い分けます。第1期間帯を通常のユーザー向け、第2期間帯を決算担当者向けに設定し、決算作業中は経理部門だけが前月に転記できるようにする、という運用です。
GR/IR勘定の分析
「FIモジュール概要」で触れたGR/IR勘定は、決算時に必ず分析が必要になります。残高が残っているということは、入庫と請求書のどちらかが未了だという意味です。
- 入庫あり・請求書なし(借方残):商品は届いているが請求書が未着。「未着請求」として負債に振り替えます。
- 請求書あり・入庫なし(貸方残):請求書は来たが商品が未着。「未着品」として資産に振り替えます。
この振替をF.19で行い、翌月初に自動で戻し入れる(洗替)のが一般的な運用です。GR/IRに長期間残り続けている明細は、発注の締め忘れや二重計上を示している可能性があり、決算のたびに点検すべき対象です。
財務諸表バージョン(FSV)
財務諸表を出力するには、勘定科目をどう集計して表示するかを定義した財務諸表バージョンが必要です。どの科目を流動資産に含めるか、どの階層で小計を出すかといった構成を、階層構造として定義します。
同じ会社コードに対して、複数の財務諸表バージョンを持つことができます。日本の会社法計算書類用、IFRS用、内部管理用といった具合に、目的別の表示形式を並行して用意するのが一般的です。
年次の繰越処理
年度末には、残高を翌年度へ繰り越す処理を行います。貸借対照表科目は残高がそのまま翌年度の期首残高となり、損益計算書科目は残高がゼロにリセットされたうえで、当期損益が利益剰余金勘定へ振り替えられます。
| 対象 | Tコード | 内容 |
|---|---|---|
| 総勘定元帳 | FAGLGVTR | B/S科目の残高繰越とP/L科目の利益剰余金への振替 |
| 仕入先・得意先 | F.07 | 補助元帳の残高繰越 |
| 固定資産 | AJRW | 資産の年度切替 |