売掛金管理(Accounts Receivable/FI-AR)は、得意先に対する債権を管理する補助元帳です。買掛金と鏡写しの構造を持ちますが、「相手からお金を回収する」という性質上、与信と督促という独自の論点が加わります。
債権が計上される経路
売掛金も、買掛金と同様に2つの経路で計上されます。物品やサービスの販売はSDの請求処理から、それ以外の債権はFIから直接計上します。
| 経路 | Tコード | 伝票タイプ | 使う場面 |
|---|---|---|---|
| SD請求 | VF01 | RV | 受注・出荷を伴う通常の販売 |
| FI直接転記 | FB70 | DR | 固定資産の売却代金、雑収入など販売プロセスを経ない債権 |
入金消込(Clearing)
FI-ARの中心的な業務が消込です。入金があったとき、その金額がどの請求書に対応するかを特定し、該当する未決済明細をクローズする作業を指します。
消込を行うと、対象となった明細に消込伝票番号と消込日付が記録され、未決済明細の一覧から外れます。売掛金残高は、未決済明細の合計として常に把握できる状態が保たれます。
| Tコード | 用途 |
|---|---|
| F-28 | 入金の登録と消込を同時に行う |
| F-32 | 既に計上済みの入金と請求書を消込む |
| FBL5N | 得意先明細照会(未決済/消込済の切替表示) |
| FBRA | 消込の解除 |
差異が出たときの処理
入金額と請求額が一致しないことは日常的に起こります。振込手数料が差し引かれていた、現金割引を適用して支払われた、一部だけ入金された、といったケースです。SAPには差異の処理方法が用意されています。
- 許容範囲内の差異:あらかじめ設定した許容限度(金額・比率)の範囲内であれば、差額を自動的に損益科目へ振り替えて消込を完了させます。振込手数料の吸収などに使います。
- 部分消込(Partial Clearing):入金額の分だけ消し込み、元の明細は残高を残したまま未決済として残します。請求書ごとの履歴が追いやすい方式です。
- 残額処理(Residual Item):元の明細を全額クローズし、差額分だけを新しい未決済明細として作り直します。残った債権の管理が単純になる一方、当初の請求書との紐づけは弱まります。
与信管理(Credit Management)
与信管理は、得意先ごとに設定した与信限度額と、現在の債権残高・受注残高を突き合わせ、限度額を超える取引を止める仕組みです。チェックはFIではなくSDの受注時に行われるため、FIとSDの連携が前提になります。
限度額を超えた受注は自動的にブロックされ、与信担当者が内容を確認して解除するまで、出荷や請求に進めません。ブロックされた受注はVKM1などで一覧確認します。
督促処理(Dunning)
支払期日を過ぎても入金がない得意先に対して、督促状を送付する処理です。滞留日数に応じて督促レベルを段階的に上げていく設計になっています。
| レベル | 滞留日数の目安 | 文面のトーン | 追加処理 |
|---|---|---|---|
| 1 | 期日後 7日 | 入金確認のお願い | — |
| 2 | 期日後 21日 | 督促 | — |
| 3 | 期日後 45日 | 最終通告 | 延滞利息の計算 |
| 4 | 期日後 60日 | 法的手続の予告 | 取引停止・与信ブロック |
督促処理はF150で実行します。督促手続(Dunning Procedure)を得意先マスタに設定しておくと、どのレベルまで督促するか、何日間隔で実行するかが制御されます。督促を行いたくない得意先には、督促ブロックを設定します。
実行のたびに、得意先マスタの督促レベルと最終督促日が更新されます。これにより、次回はひとつ上のレベルの文面が自動的に選ばれる仕組みです。