差異分析は、あるべき原価(標準)と実際にかかった原価の差を、原因ごとに分解する作業です。差が出たこと自体ではなく、なぜ出たのかを説明できることに価値があります。
差異はどこで生まれるか
製造指図の借方には実際原価が、貸方には完成品を標準原価で入庫した金額が立ちます。この両者の差が差異です。
| 側 | 内容 | 評価方法 |
|---|---|---|
| 借方(投入) | 材料の払出、活動の消費、間接費の配賦 | 実際数量 × 実際単価(活動は計画単価) |
| 貸方(産出) | 完成品の入庫 | 実際数量 × 標準原価 |
投入側の差異
投入側の差異は、「予定より多く使ったか」「予定より高く付いたか」に分解されます。
| 差異 | 意味 | 典型的な原因 |
|---|---|---|
| 数量差異 | 標準より多く(少なく)材料や工数を使った | 歩留まりの悪化、不良の発生、作業の習熟 |
| 価格差異 | 材料や活動の単価が標準と違った | 仕入価格の変動、活動単価の設定と実態の乖離 |
| 資源使用差異 | 標準と異なる資源を使った | 代替材料の使用、別の作業場所での加工 |
| ロットサイズ差異 | 段取など固定的な費用が、生産量で割り切れない | 小ロット生産による段取費の負担増 |
産出側の差異
産出側では、計画した生産量と実際の生産量の差が問題になります。
- 操業度差異:固定費は生産量にかかわらず発生します。計画より生産量が少なければ、1個あたりが負担する固定費が増え、標準原価では回収しきれません。この未回収分が操業度差異です。
- 混合差異:複数の製品を同じ設備で作る場合に、製品構成が計画と異なることで生じる差異です。
- 産出量差異:入庫した数量が計画と異なることによる差異です。
操業度差異は、製造現場の努力では解消できない性質を持ちます。設備をどれだけ効率よく動かしても、そもそも受注が少なければ差異は発生します。この差異は、生産計画や営業活動の問題として読むべきものです。
差異計算の実行
| 順序 | 処理 | Tコード | 内容 |
|---|---|---|---|
| 1 | 間接費の配賦 | KGI2 | 製造間接費を指図に上乗せする |
| 2 | 仕掛品の計算 | KKAX / KKAO | 未完成分を仕掛品として算定する |
| 3 | 差異の計算 | KKS1 / KKS2 | 差異を種類別に分解する |
| 4 | 決済 | CO88 / KO88 | 仕掛品と差異を会計へ振り替える |
順序には意味があります。仕掛品を先に計算しないと、まだ完成していない分の原価まで差異として扱ってしまうためです。仕掛品として除外したうえで、完成分についてのみ差異を計算します。
差異の行き先
計算された差異は、決済によって会計上の帰属先へ振り替えられます。振替先は会社の方針によって異なります。
| 振替先 | 考え方 |
|---|---|
| 売上原価 | 当期の損益として一括処理する。最も単純 |
| CO-PA | 製品別の収益性に反映させる。どの製品で差異が出たかが見える |
| 在庫(品目元帳) | 実際原価計算を行う場合。在庫の評価額そのものを修正する |
実際原価計算(Material Ledger)を有効にしている場合、差異は期末に在庫と売上原価へ按分され、実際原価に近い評価が実現します。S/4HANAでは品目元帳が標準で有効になっているため、この処理が前提となる構成が増えています。