CO(Controlling/管理会計)は、企業内部の管理と意思決定のための会計情報を提供するモジュールです。法定の決算書を作ることが目的ではないため、集計の切り口も報告の様式も、その企業が必要とする形に自由に設計できます。
FIとCOはどう違うのか
両者の違いは、目的と切り口の2点に集約されます。
| 観点 | FI(財務会計) | CO(管理会計) |
|---|---|---|
| 目的 | 外部報告(株主、税務、監査) | 内部管理(予実管理、採算分析) |
| 報告様式 | 法令や会計基準に準拠 | 自社で自由に設計 |
| 主な切り口 | 勘定科目、会社コード | 原価センタ、利益センタ、指図、製品 |
| 対象期間 | 会計期間(決算期に固定) | 任意(週次・日次の分析も可能) |
| 金額の性質 | 実際に発生した金額のみ | 実際値に加えて計画値・配賦値も扱う |
重要なのは、COが「FIとは別の帳簿」ではないという点です。多くの場合、COのデータはFIの転記から自動的に生成されます。費用を計上すると、その費用は同時にCOの原価としても記録されます。
原価要素という橋渡し
FIの費用勘定とCOの原価を結びつけているのが、原価要素(Cost Element)です。ある費用勘定が原価要素として定義されていれば、その勘定に転記した瞬間に、COの世界にも同じ金額が流れ込みます。
このとき、SAPは「どこに」流し込むかを知る必要があります。それが原価センタや内部指図といった原価対象(Cost Object)です。原価要素として定義された勘定に転記しようとすると、SAPは原価対象の入力を必須にします。「原価センタを入力してください」というエラーは、この仕組みによるものです。
管理領域(Controlling Area)
COにおける最上位の組織単位が管理領域です。FIの会社コードに相当する位置づけですが、性質が異なります。
1つの管理領域には、複数の会社コードを割り当てられます。これにより、法人の枠を越えた原価分析が可能になります。ただし、複数の会社コードを1つの管理領域にまとめるには、それらが同じ勘定科目表と同じ会計年度を使っている必要があります。
| 構成 | 可能か | 条件 |
|---|---|---|
| 1管理領域 : 1会社コード | 可 | 最も単純な構成 |
| 1管理領域 : 複数会社コード | 可 | 勘定科目表と会計年度が一致していること |
| 複数管理領域 : 1会社コード | 不可 | 会社コードは1つの管理領域にのみ割当 |
COを構成する主な領域
| 略称 | 名称 | 扱う内容 |
|---|---|---|
| CO-OM-CCA | 原価センタ会計 | 部門ごとの原価の集計と配賦 |
| CO-OM-OPA | 内部指図 | 案件・イベント単位での原価の集計 |
| CO-PC | 製品原価管理 | 製品1個あたりの原価の計算と実績把握 |
| CO-PA | 収益性分析 | 製品・顧客・地域などの切り口での損益分析 |
| EC-PCA | 利益センタ会計 | 部門を独立した事業体とみなした損益管理 |
S/4HANAでのFIとCOの統合
ECCでは、FIの明細(BSEG)とCOの明細(COEP)が別々のテーブルに保存されていました。同じ取引を2つの世界で持つため、両者の数値が一致しない「FI/CO差異」が起き、その突合が経理の恒常的な負担になっていました。
S/4HANAでは、これらがACDOCA(ユニバーサルジャーナル)という単一のテーブルに統合されました。1行のレコードが、勘定科目・原価センタ・利益センタ・セグメントといった属性をすべて持ちます。FIとCOが同じデータを見るため、差異という概念そのものがなくなりました。