クライアントは、SAP独特の概念です。1つの物理的なシステムの中に、独立した複数の論理的な区画を作ることができます。
クライアントとは何か
クライアントは3桁の数字で表され、ログイン時に指定します。異なるクライアントにログインすれば、同じシステム上でもまったく別のデータが見えます。
これが実現できるのは、多くのテーブルが主キーの先頭にMANDT(クライアント)項目を持ち、SQLアクセス時に自動的にそのクライアントの条件が付加されるためです。
| クライアント | 用途 |
|---|---|
| 000 | SAP標準の参照クライアント。変更しない |
| 001 | テンプレートクライアント |
| 066 | アーリーウォッチ用(廃止された環境もある) |
| 100 | カスタマイジング用(開発システム内) |
| 200 | 開発者テスト用 |
| 300 | トレーニング用 |
クライアント依存と非依存
SAPのデータと設定は、クライアントごとに分かれるものと、システム全体で共通のものに分かれます。この区別はBasisの基本知識です。
| 分類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| クライアント依存 | クライアントごとに独立 | マスタデータ、伝票、ユーザー、ロール、多くのカスタマイジング |
| クライアント非依存 | システム全体で共通 | ABAPプログラム、テーブル定義、通貨コード、単位、暦 |
クライアントの設定(SCC4)
SCC4では、各クライアントの性質と変更許可を設定します。
| 設定 | 内容 |
|---|---|
| クライアントロール | 本番、テスト、カスタマイジング、デモ、トレーニング |
| クライアント依存オブジェクトの変更 | 変更可否と自動記録の要否 |
| クライアント非依存オブジェクトの変更 | システム全体に影響する変更の可否 |
| 保護レベル | 他クライアントからの上書きやコピーの制限 |
| CATT/eCATTの許可 | テスト自動化ツールの実行可否 |
クライアントコピー
クライアントの内容を別のクライアントへ複製する機能です。用途に応じて複数の方法があります。
| Tコード | 種類 | 内容 |
|---|---|---|
| SCCL | ローカルコピー | 同一システム内でのコピー |
| SCC9 | リモートコピー | 別システムからのコピー(RFC経由) |
| SCC8 | クライアントエクスポート | トランスポート経由での移送 |
| SCC1 | トランスポート要求のコピー | 特定の要求だけを別クライアントへ |
コピーの範囲はコピープロファイルで制御します。カスタマイジングだけをコピーするか、マスタデータも含めるか、伝票データまで含めるかを選択します。
ランドスケープ設計の選択肢
3システム構成が標準ですが、要件に応じて拡張されることがあります。
| 構成 | 内容 | 採用理由 |
|---|---|---|
| 2システム | DEV + PRD | 小規模。テスト環境が不足するリスク |
| 3システム | DEV + QAS + PRD | 標準的な構成 |
| 4システム以上 | DEV + QAS + PRE + PRD | 本番前の最終検証環境を分ける |
| サンドボックス追加 | SBX + 3システム | 自由に壊せる検証環境を確保する |
システムを増やすほどライセンスと運用のコストが上がります。一方、テスト環境が不足すると品質問題が本番に流出します。このバランスをどう取るかは、Basisアーキテクトの重要な判断です。