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全体像

新人FIコンサルがつまずくポイント|元帳・債権債務・固定資産の領域別に現役コンサルが解説

SAP FIの新人コンサルタントがつまずきやすいポイントを、元帳・債権債務・固定資産の領域別に整理しました。FIコンサル4年の運営者が、実際に苦労した点と、元帳の目的と設定をつなげる考え方を紹介します。


この記事は、SAP FI(財務会計)のコンサルタントとして4年間働いている運営者が、新人のころに実際につまずいた点をまとめたものです。FIとひとことで言っても、元帳(総勘定元帳)、債権債務、固定資産と領域が分かれていて、つまずく場所も領域ごとに違います。

下の表は、新人がつまずきやすいと言われる16項目を、領域ごとに分けたものです。私自身は、このうち4項目(勘定コード表の種類、ユニバーサルジャーナル、ビジネスパートナ、特殊仕訳)以外のほとんどで苦労しました。

元帳
つまずきやすいポイント私の場合
元帳が複数ある意味(リーディング元帳と追加元帳、並行会計)苦労した
勘定コード表が3種類ある(運用・グループ・国別)比較的楽
統制勘定には直接転記できない仕組み苦労した
伝票分割苦労した
転記期間の管理と特別期間苦労した
ユニバーサルジャーナル(ACDOCA)比較的楽
債権債務
つまずきやすいポイント私の場合
ビジネスパートナ(BP)と得意先・仕入先の関係比較的楽
消込(一部入金・残額入金)苦労した
特殊仕訳(前受金・前払金・手形)比較的楽
支払プログラム(F110)の設定苦労した
外貨建て債権債務の評価苦労した
固定資産
つまずきやすいポイント私の場合
資産クラス・評価エリア・減価償却キーの関係苦労した
建設仮勘定から本勘定への振替苦労した
減価償却の計算とFIへの転記苦労した
年度切替苦労した
評価エリアと元帳の対応苦労した

以下、領域ごとに、どこでつまずくのかと、理解のための考え方を説明します。

いちばんとっつきにくいのは元帳

私が最も苦労したのは元帳です。「なぜ元帳を分けるのか」という目的は説明を聞けば分かります。ところが、実際の設定画面を見ると、その目的とどの設定がつながっているのかが、なかなか結びつきませんでした。

元帳を分ける目的は、ひとことで言えば「1つの取引を、複数の会計基準で記録するため」です。例えば、グループの報告はIFRS、日本の決算は日本基準で行う会社では、減価償却費や引当金の金額が基準によって変わります。そこで、S/4HANAでは会計基準ごとに元帳を持ち、共通の仕訳はすべての元帳に、基準によって違う仕訳はその基準の元帳だけに転記します。これを並行会計と呼びます。

  • リーディング元帳(標準は0L):必ず1つ存在する元帳。管理会計(CO)とも連携する
  • 追加の元帳:別の会計基準で記録するための元帳。すべての仕訳を持つ標準の元帳のほか、S/4HANAでは差分だけを持つ拡張元帳も使える
  • 元帳グループ:複数の元帳をまとめたもの。仕訳を「どの元帳に転記するか」を指定するときに使う
図1 元帳の中身は「共通の仕訳」+「その基準だけの調整」
元帳 0LIFRS
元帳 2L日本基準
共通の仕訳(売上・仕入など)1回の入力で、両方の元帳に入る
IFRSだけの調整仕訳元帳を指定して入力
日本基準だけの調整仕訳元帳を指定して入力

= IFRSの数字

= 日本基準の数字

0LをIFRS、2Lを日本基準とした例です。共通の仕訳は元帳グループを指定せずに入力し、基準によって違う仕訳だけを、元帳グループを指定して入力します。どの基準をリーディング元帳にするかは会社によって異なります。

目的から設定へ、対応表を作る

目的と設定がつながらない原因は、設定が「元帳の定義」「会計基準の割当」「通貨」「会計年度」「固定資産」「外貨評価」と、あちこちに散らばっていることです。私は、設定を見る前に「この会社は何のために元帳を分けるのか」をはっきりさせるようにしています。そのうえで、目的ごとに関係する設定を対応づけると、全体が見通しやすくなります。

元帳を分ける目的と、関係する設定
やりたいこと関係する設定
2つの会計基準で記録したい会計基準の定義、元帳の定義、会計基準と元帳(元帳グループ)の対応
基準によって減価償却を変えたい固定資産の評価エリアを、会計基準(元帳)に対応づける
基準によって外貨評価を変えたい外貨評価の評価エリアを、会計基準に割り当てる
会社コード通貨以外の通貨でも報告したい元帳ごとの通貨の設定(グループ通貨などの追加通貨)
基準によって決算期を変えたい追加の元帳に、別の会計年度バリアントを割り当てる
図2 会計基準が、評価の設定と元帳をつなぐ
評価の設定会計基準転記先
固定資産の評価エリア
外貨評価の評価エリア
IFRS
元帳0L
固定資産の評価エリア
外貨評価の評価エリア
日本基準
元帳2L

固定資産の評価エリアと外貨評価の評価エリアは、名前は似ていても別の設定です。どちらも会計基準に割り当てることで、転記先の元帳が決まります。設定を追うときは、まず会計基準を起点にすると迷いにくくなります。

元帳のそのほかのつまずきポイント

ポイントつまずく理由理解のコツ
統制勘定売掛金や買掛金の勘定に、仕訳入力(FB50など)から直接転記しようとしてエラーになる勘定マスタで補助元帳の種類(得意先・仕入先・資産)を指定した勘定は、補助元帳からしか転記できない。補助元帳と総勘定元帳の金額を常に一致させるための仕組み
伝票分割設定項目が多く、転記時に「貸借が一致しない」といったエラーの原因を追いにくい「利益センタやセグメントごとに貸借対照表を作るために、1つの伝票を分ける」という目的から考える。エラーの多くは、勘定の品目カテゴリの割当など、分割ルールの設定漏れ
転記期間の管理勘定タイプ別の設定や、特別期間の扱いが分かりにくい転記期間バリアント(OB52)で、勘定タイプごとに転記できる期間を開け閉めする。通常の12か月の後ろにある特別期間は、決算整理の仕訳を分けて記録するために使う
図3 売掛金の残高は、補助元帳の明細の合計

補助元帳(得意先ごとの明細)

  • 得意先A100,000
  • 得意先B250,000
  • 得意先C50,000

総勘定元帳

売掛金(統制勘定)400,000円

仕訳入力(FB50など)で売掛金に直接転記しようとすると、エラーになります。どの得意先の明細か分からない金額が残高に混ざり、補助元帳の合計と総勘定元帳の残高が一致しなくなってしまうためです。

債権債務:消込と支払プログラム

債権債務では、消込と支払プログラム(F110)で苦労しました。どちらも、日々の業務で経理の担当者が最もよく使う機能なので、仕組みを正確に説明できる必要があります。

一部入金と残額入金の違い
項目一部入金残額入金
元の請求明細未決済のまま残る消し込まれる
入金の明細元の明細に紐づいた未決済明細として残る消込に使われる
差額元の明細と入金明細の両方が残る差額で新しい未決済明細が作られる

支払プログラム(F110)は、支払の対象を選んで、支払伝票と振込データを自動で作る機能です。設定(FBZP)は、全社共通の設定、支払を行う会社コード、国別と会社コード別の支払方法、銀行の選定に分かれています。実行時に支払の対象から外れた明細は、例外リストに理由が表示されます。取引先マスタの支払方法や銀行口座の登録漏れが原因であることが多いので、まず例外リストを確認する習慣をつけると、原因を早く見つけられます。

外貨建て債権債務の評価(FAGL_FCV)も、決算のたびに問い合わせを受ける領域です。元帳の節で書いたとおり、評価の設定は会計基準とつながっているため、並行会計の会社では元帳の理解が前提になります。

固定資産:評価エリアと元帳がつながると見通しがよくなる

固定資産では、ほぼすべての項目で苦労しました。ただ、振り返ると、つまずいた原因の多くは「評価エリアと元帳の関係」が分かっていなかったことにあります。

用語役割
資産クラス資産の種類(建物、機械装置など)。転記する勘定、番号範囲、画面の項目、減価償却の初期値を決める
評価エリア資産を評価する「帳簿」。会計基準や税務ごとに持ち、それぞれ別の金額で減価償却を計算できる
減価償却キー定額法・定率法などの計算方法と、期間の扱いを決める
減価償却表評価エリアの組み合わせをまとめたもの。国ごとのテンプレートから作る

S/4HANAでは、評価エリアを会計基準に対応づけることで、固定資産の取引がその基準の元帳にリアルタイムで転記されます。図2のように「評価エリア → 会計基準 → 元帳」という1本の線で見ると、元帳の設定と固定資産の設定が一気につながります。

ポイント理解のコツ
建設仮勘定から本勘定への振替建設中の支出を建設仮勘定の資産に集め、完成したら本来の資産に振り替える。明細単位で管理している場合は、決済規則を登録(AIBU)してから決済(AIAB)する
減価償却の計算とFIへの転記減価償却の計画値は資産ごとに計算され、減価償却計算実行(AFAB)で期間ごとに総勘定元帳へ転記される。「計算」と「転記」が別であることを押さえる
年度切替ECCでは固定資産の年度切替(AJRW)を別に実行していたが、S/4HANAではAJRWは使えず、総勘定元帳の残高繰越(FAGLGVTR)で固定資産の新しい年度も開く。年度の締め(AJAB)は引き続き必要
図4 建設中は仮の資産に集め、完成後に本来の資産へ移す

建設中

建設仮勘定の資産
  • 設計費
  • 工事代金(中間払い)
  • 工事代金(最終払い)
減価償却しない

完成後

建物取得価額 =建設中の支出の合計減価償却を開始

明細単位で管理している建設仮勘定では、どの資産にいくら移すかを決済規則(AIBU)で登録してから、決済(AIAB)を実行します。

図5 減価償却は、計算と元帳への転記のタイミングが違う
4月1日4月末5月末6月末
固定資産の計画値
取得した時点で、年間の減価償却費を計算例:年間120万円(月10万円)
総勘定元帳
まだ計上されない
AFAB10万円
AFAB10万円
AFAB10万円

固定資産の画面では取得した時点から計画値が見えますが、総勘定元帳に減価償却費が計上されるのは、減価償却計算実行(AFAB)を実行したときです。

新人のうちに意識しておきたいこと

  • 設定を覚える前に、その設定が「何のためにあるのか」を言えるようにする。とくに元帳は、目的から設定へ対応表を作ると理解しやすい
  • 通貨が関わる設定は、報告に必要な通貨から逆算して考える
  • 元帳、固定資産、外貨評価は、会計基準を軸につながっている。1つずつ覚えるより、つながりで捉える
  • 債権債務は利用者が多く、問い合わせも多い。消込とF110の動きは、画面で実際に試して確認しておく

新人に教えるときの工夫は、正直なところまだ十分とは言えません。それでも、「目的をはっきりさせてから設定を見る」ことだけは意識するようにしています。これからFIを学ぶ方の参考になればうれしいです。

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