バックフラッシュ(Backflush)とは、製品ができあがったことを報告した時点で、その製品を作るのに使ったはずの部品を部品表(BOM)から逆算し、自動的に出庫する仕組みです。「後から(back)まとめて払い出す(flush)」というイメージで、生産管理の分野で広く使われる言葉です。
通常の出庫との違い
| 項目 | 通常の出庫(事前の払出) | バックフラッシュ |
|---|---|---|
| 出庫のタイミング | 作業を始める前に、倉庫から部品を払い出すたびに登録 | 完成(作業実績)を報告したときに自動で登録 |
| 出庫数量の根拠 | 実際に払い出した数量 | 部品表の数量 × 完成数量 |
| 入力の手間 | 多い | 少ない |
| 在庫の正確さ | 払出時点で正確 | 完成報告までは帳簿上の在庫が多く見える |
例えば、1台につきねじを4本使う製品を10台完成させたと報告すると、ねじ40本が自動で出庫されます。作業者が部品ごとに出庫を入力する必要はありません。
バックフラッシュが向いている部品・向いていない部品
| 向いている | 向いていない |
|---|---|
| ねじ、ワッシャー、接着剤など、安価で大量に使う部品 | 高価な部品や、ロス(不良・端材)が出やすい部品 |
| ラインの横に置いてあり、都度の払出記録が現実的でない部品 | ロット(バッチ)やシリアル番号を正確に追跡したい部品 |
| 使用量が部品表どおりで、ばらつきが少ない部品 | 使用量が作業ごとに大きく変わる部品 |
SAPでの仕組み
SAPの生産管理(PP)では、製造指図の確認入力(作業実績の登録)を行ったときに、バックフラッシュの対象になっている構成品目が移動タイプ 261(製造指図への出庫)で自動出庫されます。
| 生産方式 | 操作 | トランザクション |
|---|---|---|
| 製造指図による生産 | 作業(工程)の確認入力 | CO11N、CO15 |
| 繰返生産 | 製品の入庫と部品の消費をまとめて登録 | MFBF |
製造指図の場合、構成品目は「その部品を割り当てた工程」が確認されたときに出庫されます。どの工程に部品を割り当てるかは、作業手順の構成品目割当で決めます。
どこで設定するのか
バックフラッシュの指示は、次の場所で設定できます。製造指図を作ると、構成品目ごとにバックフラッシュの指示が決まります。
| 設定箇所 | 内容 |
|---|---|
| 品目マスタ(MRP 2 ビュー) | 「常にバックフラッシュする」か「作業場所の設定に従う」かを指定 |
| 作業場所 | その作業場所で使う部品をバックフラッシュするかを指定 |
| 作業手順の構成品目割当 | 部品ごとにバックフラッシュの指示を設定 |
| 製造指図の構成品目 | 指図ごとに個別に変更 |
出庫に失敗したとき:COGI
バックフラッシュは確認入力と同時に自動で行われるため、在庫不足などで出庫に失敗しても、確認入力自体は保存されることがあります。失敗した出庫は「エラーのある入出庫」として保留され、COGI で後から処理します。
| 原因 | 対応 |
|---|---|
| 保管場所に在庫が足りない(マイナス在庫が許可されていない) | 在庫を補充(移動・入庫)してから再処理 |
| ロット(バッチ)が決まらない | ロットを指定してから再処理 |
| 保管場所が決まっていない | 構成品目の出庫保管場所を設定 |
| 転記期間が閉じている | 期間を確認し、正しい期間で再処理 |
取り消すときは
確認入力を取り消すと(CO13)、その確認で自動出庫された部品も、反対の移動で在庫に戻ります。部品の出庫だけを直したい場合は、確認を取り消すのではなく、個別の出庫の取消や追加の出庫で調整します。
まとめ
- バックフラッシュは、完成報告のときに部品表から逆算して部品を自動出庫する仕組み
- 入力の手間は減るが、実際の使用量との差は棚卸まで表に出ない
- SAPでは確認入力(CO11N)や MFBF で、移動タイプ 261 などの出庫が自動で行われる
- 設定は品目マスタ・作業場所・作業手順・製造指図のいずれかで行う
- 失敗した出庫は COGI にたまるので、締め前に必ず処理する