クレジットメモ(Credit Memo)とデビットメモ(Debit Memo)は、すでに発行した請求の金額を後から調整するための書類です。売り手の立場で見ると、違いは次のひとことに尽きます。
| 書類 | ひとことで | 売上 | 売掛金 | 使う場面の例 |
|---|---|---|---|---|
| クレジットメモ | 請求額を減らす | 減る | 減る | 値引き、単価の誤り、数量の過大請求 |
| デビットメモ | 追加で請求する | 増える | 増える | 請求漏れ、単価の上方修正、追加費用 |
日本の商習慣では、クレジットメモは「赤伝」「減額請求書」、デビットメモは「追加請求書」に近いものです。「貸方票」「借方票」と訳されることもあります。
名前の由来:貸方(Credit)と借方(Debit)
名前は、書類を発行した側が相手の勘定をどちらに記帳するかに由来します。売り手にとって、得意先への債権(売掛金)は借方に記帳する資産です。
- クレジットメモ:得意先の勘定を貸方(Credit)に記帳する → 売掛金が減る
- デビットメモ:得意先の勘定を借方(Debit)に記帳する → 売掛金が増える
(借)売上高 ×××
(借)仮受消費税 ×××
(貸)売掛金(得意先)×××(借)売掛金(得意先)×××
(貸)売上高 ×××
(貸)仮受消費税 ×××SAP の販売管理(SD)での処理
SDでは、いきなりクレジットメモを作るのではなく、まず「依頼」の伝票を登録し、承認してから請求伝票を作る2段階の流れになっています。
| 書類 | 依頼伝票(受注伝票タイプ) | 請求伝票タイプ | 在庫の動き |
|---|---|---|---|
| クレジットメモ | クレジットメモ依頼(CR) | G2 | なし |
| デビットメモ | デビットメモ依頼(DR) | L2 | なし |
| 返品(参考) | 返品(RE) | RE | 商品が戻る(入庫がある) |
- 元の請求伝票を参照して、クレジットメモ依頼(またはデビットメモ依頼)を登録する(VA01)
- 依頼伝票には請求ブロックが設定されるので、承認者がブロックを解除する(VA02)
- 請求伝票(クレジットメモ・デビットメモ)を作成する(VF01)
- 会計伝票が自動で作られ、売上と売掛金が調整される
商品が戻ってくるなら返品、金額だけを直すならクレジットメモ、と使い分けます。返品は在庫が動きますが、クレジットメモとデビットメモは金額だけの調整です。
SAP の購買(MM)での処理
買い手の立場では、仕入先から届いた書類を請求書照合(MIRO)で登録します。MIRO の「取引」欄で、どの種類の書類かを選びます。
| MIRO の取引 | 意味 | 買掛金 | 数量 |
|---|---|---|---|
| 請求書 | 通常の請求 | 増える | 入庫数量と照合する |
| クレジットメモ | 返品や過大請求の分を減らす | 減る | 数量も減らす(入庫済み数量の取消に対応) |
| 事後借方 | 数量はそのままで、金額だけ追加 | 増える | 変わらない |
| 事後貸方 | 数量はそのままで、金額だけ減らす | 減る | 変わらない |
「単価だけが間違っていた」場合は事後借方・事後貸方、「数量も含めて取り消す」場合はクレジットメモ、と使い分けます。どちらを使うかで、発注明細の請求済み数量の扱いが変わる点に注意してください。
SAP の会計(FI)で直接登録する場合
販売や購買の伝票を経由しない取引は、FI で直接登録します。
| 取引 | トランザクション | 伝票タイプ(標準) | 転記キー(標準) |
|---|---|---|---|
| 得意先への請求書 | FB70 | DR | 01 |
| 得意先へのクレジットメモ | FB75 | DG | 11 |
| 仕入先からの請求書 | FB60 | KR | 31 |
| 仕入先からのクレジットメモ | FB65 | KG | 21 |
クレジットメモと取消(反対仕訳)の違い
どちらも請求を減らす処理に見えますが、意味が違います。
| 項目 | クレジットメモ | 取消 |
|---|---|---|
| 意味 | 新しい取引(値引きなど)として金額を調整する | 元の伝票を「なかったこと」にする |
| 金額 | 一部だけでもよい | 元の伝票と同じ金額 |
| 得意先への書類 | 発行する | 通常は発行しない(誤りの訂正) |
| SDでの例 | クレジットメモ依頼 → G2 | 請求伝票の取消(VF11) |
入力ミスを直すなら取消、取引先との合意にもとづいて金額を調整するならクレジットメモ、と考えると判断しやすくなります。
まとめ
- クレジットメモは請求額を減らす書類、デビットメモは追加で請求する書類
- 名前は相手の勘定を貸方・借方のどちらに記帳するかに由来し、立場で見え方が逆になる
- SDでは依頼伝票(CR・DR)→ 請求ブロック解除 → 請求伝票(G2・L2)の流れ
- MMでは MIRO でクレジットメモ・事後借方・事後貸方を使い分ける
- 入力ミスの訂正は取消、合意にもとづく金額の調整はクレジットメモ